2012年7月16日月曜日

辰巳哲也オクテット

7月15日の新潟ジャズストリートで、前日、学生ジャズクリニックを行って下さった辰巳哲也オクテットの皆さんの演奏を皆で聴きました。素晴らしかった!という言葉では表現しきれませんので、かなり長くなりますが感想を書かせていただきます。
まず、生徒達全員50名、ジャズを始めて3ヶ月の1年生も含め、全員が打ちのめされるような感動にひたっていました。「今まで聴いたジャズの演奏の中で一番いい!」と言った生徒はほぼ全員。「あの人たちは神だ」と言った生徒もありました。ある生徒にいたっては、「今日は17年間のわたしの人生の中で一番いい日だ!」と叫びました。わたしは生徒たちの真ん中で聴いていましたが、演奏途中に、「すげえ!」「うわっ、何だこりゃ!」「ちょーすごい!」「やばい」などのため息が耳に飛び込んできます。みんな興奮の極地で、演奏が終わった後、荷物の積み出しの間中、オクテットの演奏で話はもちきりでした。トロンボーン初心者の男の子は、「先生、ぼく、トロンボーンのプロになるにはどうしたらいいですか?とフレッド・シモンズさんに聞きたいので通訳して下さい」と言い出すしまつ。
現代っ子の高校生を打ちのめした演奏は?ド迫力のハードバップ?高速アドリブのビバップ?ノリノリのロック・ファンク系?いいえ。ウエストコーストのクールサウンドです。レニー・ニーハウスやジェリー・マリガン系の、しっかりとしたアンサンブルと、簡潔なソロ回しのおしゃれな、大人のジャズです。最大音量でもメゾフォルテです。基本、ピアノ。pp,  pppを駆使して、わたしたちのビッグバンドの作り出すダイナミックス(弱音と跫音の落差)を優に上回る演奏なのです。アンプは、ギターとベースで使用しましたが、ほぼ生音並みの音量です。ピアノはアンプなし。ソロももちろんマイクなしです。わたしはホールの一番後ろに行って確認しましたが、ppでもしっかり届いていました。確かに、コンサートホールでは舞台の上で囁いても最後部の座席まで聞こえるのですから、聞こえる筈なのです。
どうしてわたしたちは今まで、これでもか、というほどアンプで増幅した音を聞かされてきたのでしょうか?そんな疑問が浮かびます。しかも、生演奏を聴いているのに、実際はスピーカーの音を聞かされているというのは何と言う矛盾でしょう!昨年、花岡詠二さんの演奏を聞いた時にも、お客さんを客席中央に集めてから、ほぼアンプなしの演奏で大変感銘を受けましたが、今回はそれを上回る感銘でした。
そういえば、ジュリアード音楽院の学生達が来日したとき、公開クリニックを見学したことがあったのですが、なんとジュリアード音楽院のビッグバンドは弦バスにアンプをつけないと言っていたことを思い出しました。音が聞こえなくても、床から振動が伝わればいいんだ、と言っていた記憶があります。恐らく最大音量(シャウトの部分)は聞こえなくてもいいんでしょうね。ソロになったり、弱音の部分になると、無意識の世界から意識の世界へ浮かび上がって来る、そんなベースでいいのではないでしょうか。
あのppの演奏は、凄い。わたしが前々回のブログで、ジャズクリニックでppの大切さを教えていただいたと書きましたが、その真の意味はこの演奏を聴いて一瞬で理解できました。そしてクリニックの日には本当の意味で理解していなかったことを痛感しました。生徒の一人は、To See Is To Believeだね、と感嘆していました。
クリニックの日、トロンボーンのフレッド・シモンズさんが、普通の音や弱音を吹く時に顔を真っ赤にして吹いていたのを疑問に思っていた生徒がありました。その生徒が、謎が解けたと言っていました。弱音を吹く時も、ffを吹く時と同じ、いやそれ以上の体の支えとブレスと、正しいアンブッシュアー作りに、顔を赤くされていたのですね。そしてどんな時でも美しく音楽的に!と言っていたことも理解できました。バッキングの一音一音が、実に美しく、音楽的なのです!
渡辺さんのテナーは、この日もレスター・ヤングのよう。
長島さんのバリサクは、わたしが今まで、CDも含めて人生で聞いてきたバリサクの音色の中で最も美しいと断言できます。生徒も、「バリサクやばい!」とパートを越えて賛辞を惜しみませんでした。
ベースの芹沢さんは、まあ、やばいの一言ですね。指先から音楽が魔法のように流れ出す、という感じです。生徒も芹沢さんのベースで演奏すると、「めっちゃ演奏しやすい!スゥイングする!」と叫んでいました。
駒村さんのギターにも魅了されました。オクテットでの演奏は、コードではなく、ほとんどが音符弾きですが、管とギターを合わせたシンクロ感は、フルハウスのウェス・モンゴメリーを彷彿とさせますが、実はそれ以上だと思いました。
ピアノの八木さんは、突然立ち現れるという感じです。あくまでもアンサンブルの中にとけ込んでしっかりとハーモニーをサポートしつつ、ソロになると華麗な蝶のように飛来し、まさに超美技というソロを聴かせてくれました。生徒の「やばい!」が連続して聞こえてきたのもピアノソロの時でした。
ドラムの諸藤一平さんはほぼブラシの演奏です。それでもベースとともにバンドに強力な推進力を与えてスゥイングさせます。バディ・リッチだけがドラマーじゃない!ということですね。実はJazz Hornetsのドラマーは伝統的にバディ・リッチ信奉者で、わたしは常々、「弱音のドラムの職人芸があるんだよ」と言っていましたが、まさにこの日は目からウロコを落としてくれたことと思います。
このオクテットによる、ウエストコーストのアンサンブル重視の演奏。これはビッグバンドにも非常に参考になる形態だと痛感しました。ひたすらに熱くアドリブを演奏するコンボ形式と比べると、アンサンブルをきっちりと組む、という部分が大きな役割を果たしており、そこがジャズが難しいと感じている高校生にもよく理解できるポイントだと感じました。アドリブで聴かせるには、相当うまくないと厳しいですよね。アンサンブルは練習すれば美しい音楽に磨き上げることができます。しかし、アドリブがなければジャズではありません。そこで、ビッグバンドの形式は、学生がジャズを始めるのに最適なフォーマットだと思っているのですが、このオクテット形式も学生が取り組むには良いフォーマットだと感じました。辰巳さんが「楽譜の手に入れ方を教えますよ」と言ってくださったので、Jazz Horentsも、ぜひオクテットを結成したいと思っています。今このコンセプトでジャズをやったら面白いというのを見いだした方は辰巳哲也さん。その業績は評価してしすぎることはないと思います。
辰巳哲也オクテットの皆さん、本当にありがとうございました!!

1 件のコメント:

加持顕 さんのコメント...

いつもお世話になっております。

本日更新した「新潟でジャズと共に暮らす」3つの記事内にて、ブログ記事へのリンクを張らせてもらいました。

よろしくお願い致します。